プロテニスプレーヤーの加藤未唯選手。
4大大会・全仏オープンテニス2023の女子ダブルス3回戦で加藤未唯選手が打ったボールがボールガールに当たってしまい、危険な行為と見なされて失格となったことが話題になっています。
この記事では、失格に至った経緯、加藤選手や対戦相手、テニス界の反応などをまとめて紹介します。
失格に至った経緯とは
女子ダブルス3回戦で加藤未唯選手とアルディラ・スーチャディ(インドネシア)組は、第16シードのマリエ・ブズコバ(チェコ)とサラ・ソリベストルモ(スペイン)組と対戦しました。
第2セット途中で加藤選手が相手コートに返球しようとして打ったボールがボールガールに直撃。
ボールガールが涙し、加藤選手が歩み寄って謝罪しました。
審判は一度は警告としましたが、その後に対戦相手が執ように失格を主張した結果、突如裁定が変わり、まさかの失格処分が下されました。
この審判に対しての猛抗議が、対戦相手の戦略で失格にさせたのではないかと言われています。
そのシーンがコチラです。
動画を見ると、加藤選手が返球したボールは、ノーバウンドでボールガールへ飛んでいき、頭へ直撃しているのが分かります。
通常であればボールガールへ返球する際には優しく緩やかな軌道でキャッチしやすいようにします。
しかし、プロの試合では比較的早めのボールで返球する海外選手も多く、試合の熱戦と共に精神的にも熱くなって強めの返球するシーンはよく見かけますよね。
個人的には、失格というレベルの行為ではないように感じますが、試合では審判の判断が絶対となるので非常に残念な結果となってしまいました。
加藤選手の反応
判断に対して
加藤選手は試合後にSNSで謝罪のコメントを投稿しました。
また、混合ダブルスの準々決勝でベスト4進出を決めたあとには、涙を浮かべて会見に臨んでいます。
加藤選手は「納得がいかない」と心境を明かし、「ボールガールに強く当てたと認識されたと思いますが、本当にそうじゃない」と、その場で主張しました。
大会の運営責任者に試合の動画を見て確認してほしいと言いましたが、『ビデオを見ることはできない。 アンラッキーだね』としか言われなかった」と当時の状況を語っています。
また、混合ダブルス優勝後のスピーチでは、「賞金とポイントが戻ってくることを願っています」と大会側へ異例の呼びかけをしました。
加藤選手は、女子ダブルス失格後に精神的にも苦しかった中での悲願のグランドスラム優勝。それまでに失格の経緯や対戦相手、審判の判断についてずっと考えていたと思います。
その中で、優勝後のスピーチと言う無視できない場所で自分の意見を大会関係者へ伝えたことは良いことだと思いました。
失格後のボールガールに対して
加藤選手は、女子ダブルスで失格となったボールガールに対して以下の投稿をしました。
英語ですので翻訳すると
「あなたが元気で、ボールガールとしてボランティア活動を続けていると聞いてうれしく思います。それを聞いてとても嬉しいです。私があなたに贈った贈り物を楽しんでいただければ幸いです。またお会いできるのを楽しみにしています。ご多幸をお祈り申し上げます。」
加藤選手は、失格となって精神的にもつらい状況であったと思いますが、ボールガールのことを気遣ってプレゼントを贈りました。
プロ選手として自分のことよりも相手のことを気遣うことの大切さを教えてくれる、とてもほっこりするエピソードですよね。
応援してくれる観客や関係者が嫌な思い出とならないように、ボールガールをしてくれるボランティアスタッフにも配慮した行動はとても素敵だと思います。
対戦相手の反応
- 失格を求めてはいない。審判が判断した
- もっと試合を続けたかったがルールはルール
対戦相手のブズコバ選手とソリベストルモ選手は、試合後に記者会見で自分たちの主張を述べました。
ブズコバ選手は「私たちは失格を求めたわけではない。審判がそう判断したのだ」と弁明し、「加藤選手はボールガールに当てるつもりはなかったと思うが、ボールを渡すときにはもっと注意しなければならない。彼女はボールを強く打ってしまった」と指摘しています。
ソリベストルモ選手は「私たちは試合を続けたかった。でもルールはルールだ」と述べました。
このように対戦相手は、決して失格を求めていないと主張しています。
しかし、審判は一度は警告としましたが、対戦相手が執ように失格を主張したようにしか見えません。
もちろん、失格を判断したのは審判ですので、全てが対戦相手が悪いとは思いませんが、それを促したのは明らかといえるので、戦略だったと言われても仕方がないと言えるでしょう。
みなさんはどのように捉えたでしょうか。
テニス界の反応
加藤選手の失格に対して、テニス界からは様々な意見が出ています。
元世界ランキング1位のマルチナ・ナブラチロワ氏は「加藤選手は失格に値しない。彼女はボールガールに当てるつもりはなかったし、ボールガールも大した怪我をしていない。審判は裁量を持って判断すべきだった」と批判しました。
一方で、元世界ランキング2位のアレックス・コレチャ氏は「加藤選手の行為は危険で無責任だった。彼女は失格になるべきだったし、罰金も払うべきだ」と主張しています。
また、PTPA=プロテニス選手協会は「不当な判定だ。偶然の出来事で、攻撃的なものでなかったことは明らかだ」とする声明を発表し、「少なくとも賞金とポイントは回復させる必要がある」としています。
今後の四大大会側とテニス連盟等の動きに注目ですね。
トーナメントディレクターのモレスモ氏が以下のように言及しました。
「私は良いか悪いかのコメントはしない。なぜなら判定を下した後にビデオを見るのは簡単なことだからだ。この決定は審判とスーパーバイザーがビデオを見ずに判断した。グランドスラムのルールに則って下した判断は明確なもの。ボールガールがあれだけ長く泣いていたことで何かしらの決断を下さなければならなかった」
Yahoo! ニュース
世間の反応
加藤未唯選手が失格となった際に、対戦相手のサラ・ソリベストルモ(スペイン)、マリエ・ブズコバ(チェコ)の2人には、失格となった加藤選手を見る「笑った」画像も注目され、批判殺到しています。
同国メディア「マルカ」も「失格の後の加藤の復讐:ダブルスに勝って、賞金とポイント返還を要求」と見出しを打って電子版の記事を公開したが、ここにはスペインファンから様々なコメントが書き込まれた。「ソリベスは、シングルもダブルスもその次からアウト。カルマだな」「ソリベスは品のないテストプレーヤーだね。同じ状況でも、ラファ(ナダル)は、そんな風に振舞わなかっただろうね」とソリベストルモの行動を批判する声もあった。
THE ANSWER スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト
失格となった経緯が、審判の判断が対戦相手の猛抗議によって覆っているため、この映像を見ていた人にはスポーツマンシップに欠けると思ったことでしょう。
トップ選手であれば、選手を失格にすべきと抗議するよりもボールガールのケアすることを真っ先に考えて行動していたと思います。
批判殺到していて精神的にもつらい環境になっているかもしれませんが、プロ選手である以上、プレー外でも見ている人に手本となるような行動を行ってほしいですね。
今後について
トーナメントディレクターのモレスモ氏が言及した内容から、「賞金とポイントは返ってこない」可能性が高いでしょう。
しかし、テニス界やメディアの各方面から賛否両論の声があがっているので、公式ルールの内容をしっかりと考える必要があると思います。
確かに公式ルールブックでは「すべての失格の場合、グランドスラム・スーパーバイザーと協議したレフェリーの決定は最終的なものであり、異議申し立てはできない」との記載があります。
スポーツを行う上で審判の判断が絶対となるのは仕方がないと思いますが、選手を守る視点で公平なルール作りが必要な時代に入っているのではないでしょうか。